包装リースだより
包装リースだより(2016年10月号)
2016年10月15日
体験的中国司法論①
今回は、前職のメーカーで体験した、4年強に亙る裁判を通して垣間見た中国司法の実情について、今月・来月の
2回に分けて記載します。あくまで一つの体験に基づいた話のため、一般化はできませんが、感触を得ていただければ幸いです。
舞台となったのは、江蘇省某市、台湾企業との合弁会社(1997年設立)での事案で、2009年秋に台湾側が会社を一方的に占拠したことに対して日本側が提訴、2013年末に勝訴するまで、裁判が行われました。途中知人からは、「どうせ勝てないし、もし勝てても時間とお金の無駄、工場は元に戻らないし、賠償金を払わせることは無理」と言われていました。しかし当時は、それで引き下がるわけにはという気持ちと、合弁会社の生産停止に対応して(サプライチェーンを活かす意味で)急きょ同市内に立ち上げた独資子会社のオペレーションを守るためにも司法判断を仰ぐことが適切と考えていました。
①三権分立せず
日本の三権分立とは異なり、中国では司法組織が、人民解放軍と同様、共産党の一組織です。このため政治判断が裁判の動向に露骨に影響してきます。このケースではさすがに結論を左右しませんでしたが、再三にわたって判決言い渡しが延期され、その理由として非公式ながら日中間の政治的緊張(具体的には尖閣諸島)が原因と言われました。
また被告の台湾側が「海峡協会」という台中の友好政治連盟のような組織を動かして、盛んに市政府にアプローチしたため、当初提訴がなかなか受理されなかっただけでなく、市政府から裁判の取り下げ(その結果どうなるかは曖昧なまま)を何度も要請されました。もっともこの部分は厄介事を避けたい役人的な発想も影響していたと思います。
②二審制だが二審制ではない
制度的には中国の司法制度は間違いなく二審制です。しかし弁護士などの話によると、一審の判決を出すに当たっては、二審となる上級審と「調整している」とのことでした。各々の判決で齟齬が出るのを防ぐためということでしたが、これでは二審制の意味が全くないと感じるのは私だけでしょうか。(次号へ続く)
副社長 君浦康友